山。

不動産投資において「山」というのはとても重要な要素だと思っています。

 

これまでの記事にも書いてきたような、景気循環としての「経済の山」と、地理的な意味においての「山」の、そのどちらにおいてもです。

 

まずは、「経済の山」についてですが、コロナ以前に、すでに「山」はすでに過ぎつつあったのですが、コロナがその決定打をうってしまったかに思えました。

 

それ系のブログやYouTubeなんかも

 

「買い時到来!」

「本当の買い場は20◯◯年に決定!」

 

と、だいぶ賑わっておりました。

 

私に言わせれば、リーマン(サブプライム)ショックの経験則を当てはめてるだけでしょってことなんですけどね。

 

もちろん本当のことは過ぎてみないと分かりません。

 

事実、株価は輪転機と化した世界各国の中央銀行が、お金という紙切れをじゃんじゃん刷り始めたのですから、ものすごい勢いで戻すどころか、それ以前を突き抜けてしまいました。

 

あふれるお金は、都心の不動産にも流れ込み、局所的な値上がりを見せました。

ほんの一瞬だけ、ささやかな買場はあったのですが。

 

ただ問題は、「経済の山」における「不動産」の立ち位置はいつも、

 

一番最後に登って、一番最初に下りる

 

のが常ですので、今回の局所的な値上がりが、頂きの直前にある「男坂」だった可能性も捨てきれません。

 


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それでも、その波及は残念なことに地方の一部の住宅地に若干の値上がりが見えたものの、溢れるお金が広く広範に影響を与えているようにはとても思えません。

 

やはり人口減少という構造的な問題が大きいのでしょう。

 

ならば、地方の収益物件は値段が落ちてもいいじゃないか。

 

と思うのですが、今度は落ちたら落ちたで

 

銀行が貸したがらないのです。

 

人口減少を理由に。

 

結果、いも洗い場と化したプールのように身動きの取れない状態にあります。

 

それでも買えるひとは相変わらず買える状態にあるので、そういうひとにとっては吟味のしがいがあるのかもしれません。

 

ただ、あらゆる救済措置が奏効しているのか「売物」が少ないのまた確かなのです。

 

「物は困っているひとから買うのが一番安い」

 

という大原則に異論はないのですが、そういうひとたちがいつ頃出てくるのかはまだわかりません。

 

いつぞやのブロガーやyoutuberのように「買い時がわかりました!」みたいなことは言いたくありませんし、言うこと自体ひどく無責任でお寒い感じがします。

 

ただひとつ言えるのは、何もそんなに焦る必要はないでしょ、ってことです。

 

僕は、「経済も物理」だと思っているので、勢いよく跳ねたスーパーボールのように、動きが定まらないうちはまだ拾いたくないと思っています。

 

実際、リーマンショックがきて、震災が来て、アベノミクスが始まるまでは、株式市場も不動産投資市場も

 

まったく弾んでいませんでした。

 

むしろ沈みきってました。

 

その頃、僕は仕事上、地方の一棟ビルを多く買っていたのですが、よく同業のひとからも

 

「そんなに地方ばっかり買って大丈夫?」

 

言われたもんです。


そのときにおける「常識」も

 

人口減少の激しい地方は買うもんじゃない、でした。

 

なので、ずいぶん安く買うことが出来ました。本当にそれくらい買うひとがいなかったのです。

 


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それが数年も経たないうちに都市圏の値段が上がり始め、気がついたときには元気のいい「サンタメ業者」たちが

 

地方・RC・レジ

 

を物色し始め、それをものの見事に個人投資家に売り付けていくようになりました。

 

※RC(鉄筋コンクリート造)であっても危険な値段なのに、S(鉄骨造)ともなると、もう目も当てられない状況でした。

 

僕としてはサンタメ業者を褒める気持ちは毛頭ありませんが、一棟で数千万円も「抜ける」となれば、やるかどうかは別にしてそちらに走りたくなる気持ちも分からなくもなかったです。

 

地方の業者と話をしても、まだ浸透しきってなかった「新・中間省略登記」及びその営業攻勢にだいぶ辟易しておりました。

 

※細かい用語については過去の記事をご参照下さい。

 

ちょうどその頃、かつて仕入れた「地方ビル」を売り出したのですが、いともあっさりと東京の業者が買った値段の

 

2倍

 

で買ってくれました。

僕としては万々歳でしたが、ほどなくして、僕はそのビルを大手仲介会社からそれとは知らず、かつての

 

3倍

 

で紹介されました。

…もちろん買いませんでしたし、その後どうなったも知りません。

 


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続いて「地理的な意味での山」についてですが、これもだいぶ前のことにはなるのですが、僕はある個人の方から某茨城県取手市の中古戸建(投資ではなく実需)を買わせて頂くことがありました。

 

一通りの段取りがついたあとに僕は、なぜ取手に戸建を買われたのですか?と聞いて見ました。(残念なことですが、「売る」というよりは「売らなければならない」状況でした)。

 

「東京からコンパスで円を書いて、一番近くて安いのが取手だったら」。

 

築年がバブル真っ盛りですので、さもありなんといった感じでした。

 

僕は今でもその言葉が頭にひっかかり続け、ことある事にあのご主人の言葉を思い出します。

 

似たような言葉を別の方から聞いた覚えもあります。

 

「バブルの波がここまで届いたと思ったらさ、さぁーと引いていったんだよ」。

 

今、都市圏においても多くの人たちが、「山から下りはじめて」います。

 

かつては何とも思わなかった傾斜他も、歳とともに絶望的にしんどい立地に変わっていき、そのしんどさに耐えられなくなったひとから下山し始めているのです。

 

僕はそんな傾斜他に立つ不動産を見るにつけ、経済の波があそこまで人を押し上げたんだなぁ

 

とある種の感慨を持って眺めております。

 

なにも当時そういったところに不動産を購入したひとたちのことを愚かだったと思っているわけではありません。それくらい「勢い」が強かったのでしょうし、当時における常識においては、それが「普通」だったのでしょう。

 

そう思うと、やはり「経済とは物理」なのではないかと思う次第なのであります。

 


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