ぶら下がり。
小さい頃わが家にもあったぶら下がり健康器ですが、最近ではあまり見かけることもなくなりました。
あれだけ場所を取ってインテリアにもならないものが全国津々浦々にまで浸透した事実を考えると、当時の販売戦略や時流みたいなものに感嘆すら覚えます。
不動産業界においても「ぶら下がり」というものは存在し、とくに売り急いでない物件を「これで売れたらラッキー的」な金額でREINSやネットなんかに情報を公開しておくことを「(物件を)ぶら下げておく」とか言ったりします。
仮にその物件で成約はしなくともお問い合わせなどで、業者や個人の方と新しいご縁ができることもあるので一石二鳥なのです。
業者としては理解出来るのですが、個人の方と売却の話をしていて「すでに別の(大手)不動産会社に依頼しているのだけど」言われると、私の頭の中にはだいたい二つの情景が頭に浮かんできます。
【(大手)不動産会社誘導パターン】
オーナー様がなんとなく安心と大手不動産会社に出向き、それらしい査定表をもとに値付した価格でネット上に公開されているものの、周辺の売却事例などをメインに金額を組み立てているので「土地値」に大きく偏っていることが多く「この利回りではまず売れないだろう」といった金額のまま、ネット上に晒され続けている。
※収益物件の場合、賃借人付の建物が建っていることが大半なので、「その土地値」にするためには、入居者の方々に(現金供与などをして)引っ越してもらい、建物を解体して整地・測量をして、はじめて「その土地」になります。そこに至るまでには多大な費用や労力と時間がかかりますので、それをどう捉えるかによって判断はわかれます。そして何より(本当に)強力な借地借家法に守られた入居者のたったお一人でも非協力的であった場合「その土地」は完成しませんので、土地値に偏り過ぎて利回りが弱いと「収益物件であるにも関わらず」個人投資家の興味を引かなくなってしまいます。
しばらくすると「売れなかった既成事実をもとに」(大手)不動産会社が値下げの「ご提案」をしてきて、渋々ご納得して頂いたオーナー様の物件を売れるまで、色褪せるほどに晒し続けることになります。
これまでのブログでも書いてきたように、収益物件は「(情報)ルート」と「鮮度」が命ですので、まったく逆の現象が起きてしまいます。
【オーナー様誘導パターン】
相場観のあるオーナー様が大手不動産会社に出向き自ら金額を提示したのはいいが、「自らの」相場観があり過ぎるせいで「きっとこれくらいなら売れる」という思い込みが強くてとても頼もしいのですが、多く場合は「自分が買った値段」や「あまりに希望的な欲」に拘っていることが多いので、(大手)不動産会社の接客スペースで尊大な態度を取っている姿がなんとなく目に浮かんできてします。
もちろんそこは大手たるもの、そういったお客様でもお引き取り頂くわけにもいかないので、オーナー様のご希望通り妙に小刻みな3,988万円などで図面を作成し、それをネットにアップして…
と、そこから先はいつもと同じ流れです。
ただオーナー様主導の場合、(大手)不動産会社から「値下げ」のご提案をする前に「どうなってるんだ!」となりますので、「ご提案」にまで辿り着かないことが多いかと思います。
そもそも「ご提案」をしたところで耳を持って下さるかもわかりませんが。
そういった物件が載っている(大手)不動産会社の自社ホームページなどを拝見すると、若くてフレッシュな営業マンが担当していることが多く、センター長などから「経験を積まされているんだろうな」などど勝手に妄想しています。
業者の場合ですと「その物件」をきっかけにして新しいご縁が生まれることもあるので、「ぶら下げておく」ことも悪いことばかりではないのですが、個人のオーナー様が、自ら、もしくは(大手)不動産会社主導でそれをやることをメリットはどう考えてもないと思うのですが、実際には全国津々浦々で同じようなことが繰り返され続けています。
わが家にあったぶら下がり健康器はやがてクリーニング屋から引き上げてきた洋服の引っ掛け場所になってしまいましたが、不動産に関してはやはり「売れるときに」「売れる値段」で売っておくのが一番よろしいかと思います。