アロハセンサー。
市況(特に金融情勢)に特に影響を受けやすい不動産業界ですが、収益物件を取り扱う業者の数はここ数年でだいぶ淘汰されたように思います。
長年の癖なのか、初めて会う同業者のひとに対しては「この人(もしくはこの会社)は5年後業界内に存在しているのだろうか」という観点でつい見てしまいます。
歳はあまり関係がありません。
初々しい新卒の人もいれば、それなりに歳を重ねたひともいます。
何かしら感じるものがある若いひとには「頑張って偉くなって下さい」と言いますし、私よりベテランのひとには「色々と教えて下さい」と頭を垂れます。
今はひと波過ぎ去ったあとなので比較的落ち着いていますが、金融情勢の変化によってまた「ブーム」らしきものがやってくると、嗅覚に「自信をお持ち」のギラギラした感じの人が増え、その人たちがやたらとエントランスが立派な不動産会社を作り上げていきます。
これは実に毎度のことで、そういった様を眺めているだけでも、業界の「加熱度」が推し測れます。
不動産業者におけるヒートセンサーはだいたい以下のように推移していきます。
level1
聞き覚えのない「おしゃれな感じ」の社名をちょこちょこと耳にするようになる。少し前ならカタカナ(もしくは英語)で、今であればあえての平仮名でしょうか。
level2
それほど付き合いの深くないひとがそういった会社に入って稼いでいる「らしい」噂を耳にする。仮に不動君とします。
level3
不動君がやってきて、目下の事業内容を説明しながら得意気な表情を惜しげもなく晒し、時間の見づらそうな腕時計に目をやる。
level4
同業者の集まりやすい入札案件会場に「消しゴム」が似合いそうなスーパーカーがやってくる。
level5
「おしゃれな感じ」の会社内で独立問題が発生し、部下や顧客を引き連れていって関係性が悪化した挙げ句、本来外部とは関係のない内輪揉めのはずなのに「あそことは付き合わないで下さい」と余計なお節介を受ける。また、このタイミングで不正が明るみになることが多い。
level6
競い合うように黒づくめの服で社員旅行でハワイに行き、こんがりと焼けた姿でアロハポーズを決めた集合写真がホームページにアップされる。
level7
少し前から始まっていた女性社員による社内ブログの更新頻度が落ちていく。
level8
「諸事情により」社名もしくは代表者が変わる。
level9
音沙汰のなかった不動君から相談依頼が入る。(←いまココ)
だいたいこんな感じていつも流れていくので、私はそれに合わせて物件を仕込んだり、売り急いだりしています。
個人的にはlevel5の独立問題による「あそことは付き合わないで下さい」までくると要注意の黄色信号が点り、
level6の「黒づくめのアロハポーズ」の段階までくると、頭のなかで警報ブザーが鳴っています。
そんなセンサーも働かせつつ「今のうちに売っておいたほうがいいですよ」などとお客様にお伝えもするのですが、素直に聞いて下さる方もいれば、「営業トークの一環」でしょと受け取られることもあります。
もちろん全てのひとに信じてもらえるとは思っていないのですが、やはりそこは人の子ですので、信じて下さった方にはつい肩入れをしてしまいます。
疑ってかからないのも問題かと思いますが、常に疑いっぱなしの人(結構いらっしゃいます)が「損をすることなく得をしている」かと言えば、必ずしもそうではないような気もします。
「今となっては売るに売れない物件」に出会う度、あのとき私の話を素直に聞いて下さった方に対しての義務は果たせたかな、などと思ったりもします。
それもひとつの縁だったり、運だったりもするのでしょうが、信じることよりも疑うほうが楽なので致し方ないことなのかもしれません。
それでも「そこ」をどう伝えるかが仕事なのだと思っています。
それに比べれば実在する不動君(仮名)の相談内容はあらかた想像がつくのでよほど気は楽なものです。