エリート。
欲とは際限のないものです。
先日、サービサー(債権回収会社)からの案件が立て続けに2件来ました。
資料を見るまでもなく、エリア・構造・築年数からして、
ここ数年以内に「掴まされた」個人投資家さん
ここ数年以内に「掴まされた」個人投資家さん
そもそも物件概要書などというものはありません。(情報は生々しいほうがいいに決まっていので、仕事柄そっちのほうがテンションが上がります。同じ理由から、僕はすでにマイソク化したものを買った憶えがありません。)
※マイソク:一般的な意味での不動産販売用図面。
僕は登記簿に目を通します。
A県 やや古め RC造
B県 やや新しめ RC造
で、どちらも関東の近県です。
取得年月日はどちらも今から4、5年前ということでおそらく立て続けに「掴まされた」のでしょう。
※「多法人スキーム」:合同会社などを作り、その都度『一棟目です』と言って銀行を騙すやり口です。♪初めてのア●ム♪の無限バージョンと言ったらいいのでしょうか。個人の債務は信用情報にきちんとひもづけされているので、♪初めてのア●ム♪はあくまで初めてだけなのですが、法人の場合はそのようなシステムがないのでそこをついたやり方です。(管理法人としてきちんとその都度銀行に話している場合はその限りではありません)
次に、ついている抵当権ですが、同じ銀行ではなく、その頃そういう意味で有名だった銀行のものがそれぞれついています。
記載された抵当金額から割り戻すと、案の定、
8%前後
おそらく業者が10%前後で仕入れて、個人投資家に7~8%でおろしたのでしょう。
仕入れると言っても登記簿への記載もありませんので、いわゆる「新・中間省略」だったと思われます。
※新・中間省略:「新」がつくのは、以前に一度ダメになったものが(合法的に)復活したからです。A→B→Cと所有権が移転していくなかで、AからCへと直接移転させる方法です。Bのことを俗に「サンタメ業者」と言います。(あくまで契約書にしか登場せず、そこに『第サン者のタメの契約』と書いてあるからです)。金額的にいえば、8000万→1億→1億2000万といったところでしょうか。
先程書いた「多法人スキーム」を活用しなかったところを見ると、
規模拡大(物件をたくさん持つこと)が最大の目的ではなかった
のかもしれません。(たまたま付き合いのあるところが「そのような指導」ができなかったということもあり得ますが)
それでも「普通に」2、3棟買えてしまうところが、高年収エリートの羨ましいところでもあり、怖いところでもあります。
銀行にしてみたところで、セカンド・ポケット(不動産)のほうがショートしたところで、ファースト・ポケット(本業)のほうでカバーできると踏んだからこそ「そんなもの」にまで融資したのでしょうが、借りた方にしてみれば、お金のカバーはできたとしても気分のカバーはまでは出来ません。
おそらくそんなエリートにしてみれば、「自己破産」なんて、どこか遠い世界の出来事くらいにしか思っていなかったでしょうし、そんなことで自身の頭を悩ますなんて想像もしていなかったのではないでしょうか。
中間の利益をたんまりと搾取するサンタメ業者と、高年収のエリートはある意味、対極な存在のようにも思えますが、世の中、対極同士のほうがあっさりと結びつきやすいのは世の常なのでしょうか。
相場としての遡及利回りはその時々の情勢によって変動しますが、最終エンドである個人投資家さんの
カツカツ具合
はいつも変わりません。
もちろんそれは間に入っている業者の仕入額も金融情勢によって変わるからでもあるのですが、結局のところ、
カツカツになるような金額で販売
しているからに他なりません。
ただし業者も商売である以上、「適正な」利益を求めるのは当然なことでもあります。
問題は、買われたひとがそれを理解しているか
だと思います。
以前、個人投資家さんに
「1億の物件を買って100万のキャッシュフローが欲しい」
と言われたことがあります。
当然僕はそんな夢のような物件はどこにも(絶対とは言いませんが)ありませんとお答えしたから、何だか微妙な空気が流れました。
ん。
もしや100万円のキャッシュフローは月ではなく、年?
聞き返すと、やはりそうでした。
1億の借金をして、年に100万円のキャッシュフローを得たいと言うのです。
ちょっと待って下さい。
「月に8万ちょっとの利益を得るために1億の借金をするのですか?」
思わずびっくりした僕をよそに、相手は至って平然としています。
何か問題でも?
いえいえ、問題だらけです。
きっと、どこがで刷り込まれたのでしょうが、「よくそんなダイナミックな話を刷り込ませらるな」と感心してしまったほどです。
一度信じてしまうと、それはそのひとにとっての常識になってしまいます。そんなとき僕は自戒も込めて、かつての東京モード学園のCMコピーを思い出します。
常識を疑え。
きっと、怖いのは世間の常識ではなく自身の常識なのかもしれません。
そうは言っても、皆さんが年収2000万超のエリートさんのように必ず自己破産することになるとは言いません。けれどそうなることだって、
十分にある。
しかも容易に。
ということだけはどうか忘れないで下さい。
それでも、エリートさんが自己破産を選んだことは僕は賢明な判断だったと思っています。
最初からカツカツだった物件が「いとも簡単にキャッシュアウトの状態」になり、本業からそれを補填し続けるのにも限界はあるでしょうし、削がれた集中力で本業がおろそかになったのであれば、元も子もありませんからね。
エリートさんだからこそ、本業でたんまり稼いで仕切り直すことも可能かもしれませんが、そこまででもないひとが業者とタッグを組んで、
本来ひけてはいけない融資までひいた強欲さん
については、僕から申し上げることは何もありません。せめてそれらしいセミナーやウェブサイトで自身の、
「資産規模」という名の借金をひけらかしてキラキラと輝いて下さい。
大事なのは「年収」であって「年商」ではありません。そう思っている僕は、
家賃年収○,○○○万とか言われても全くピンと来ません。
知りたいのは「払うもの払って結局幾ら残るの」ってことです。
仮に1億の物件ですと、(完全な)手残りが2~3%で買われているひとが多いので、年200万~300万といったところかと思います。
つまるところ、
家賃年収1億円とは、
毎月20万前後の手取りということなのです。
そんなに凄いことですかね?
手取り20万って。
(借金を追わない20万の収入とは意味が違います)
もちろん感じ方はひとそれぞれなので、凄いと思っているひとにしてみれば、それは凄いことなのかもしれません。
けれど、よく分かってないひとを騙すような真似だけはどうかなさらないで下さい。
みっともないですし、とても貧乏くさいです。
僕は、
そんな方々とは、いずれ逆回転が起こったときにサービサー(債権回収会社)を通じてお会いしたいと思っております。