10年未満。

10年ひと昔とはよく言ったもんです。

 

なにも僕の業界経験(16年)より短いから10年と言っているわけではありません。

景気の循環サイクルからそう言いたいだけです。

僕は同じ理由から、この業界を20年30年と生き抜いてきた諸先輩方のことをそれだけでもって熟練工のように尊敬できます。

 

荒々しい波を潜り抜けて「いまだこの業界いることが」、すでに多くのことを証明してくれているからです。

 

それくらい「入りやすく、放り出されやすい業界」なのです。

 

そんな熟練工の残念なところは、面倒なことを押し付けてすぐに楽をしようとするところなのですが「面白い情報をくれたり、難しい案件を上手く(ときに非ロジカルに)取りまとめてくれたりするので」そんなときは喜んで楽をさせてあげます。


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 前回の記事で「仕入業者がどのように個人投資家を眺めているか」について書きましたが、それとは別に上記のような熟練工たちは、

「最近『元気な』業者」

をも冷静な(どちらかと言えば冷ややかな)眼で眺めています。
なので、そういった熟練工たちに

最近、どこが元気なの?

と聞かれるときは、そう言う意味です。

もちろん、僕は素直に答えます。

数年以内にはなくなるであろう業者を。
場合によっては「掴ませ」たりもします。
そして本当になくなります。

エンドユーザーに優しくする責務はあっても、付き合いのない同業者に優しく責務はないと思っているので。

まぁ、僕が何もしなくとも、

行儀の悪い(筋道の通っていない)担当者や業者は早晩いなくなるのがこの業界の常なので、ほっておけばいいだけなのですけどね。

ただ、それとも知らずそんな業者に捕まってしまった個人投資家さんにしてみれば、そんな悠長なことも言ってられないので、もし今お付き合いのある業者に多少なりとも違和感(僕は「違和感」をとても大事にしてます)を感じているようであれば、それとなく猛烈に距離をとって下さい。


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ただ、そんな業者にもいいところがあります。それは、

比較的わかりやすく「怪しい」ところです。

なので、よほどの「プロ」にでも捕まらない限り、ある程度は事前回避することができます。

その分かりやすさたるや、ある種の親しみさえ覚えるほどです。

そういう意味では、業者の選別はさほど難しくはないと思うのですが、それよりも厄介なのが、

 

成功という大家存在です。

 

ついつい「成功」の二文字が人を惑わせます。
結果が出ているのだから、間違いないと。

業者ではないことで(警戒の)ハードルが下がり、「成功」という二文字が「同じようにやれば大丈夫」という安心感を与えるのでしょう、きっと。

 

でもよく考えみて下さい。
不動産である以上、いくら安くても大きなお金が動きます。大きなお金を動かすからには、そもそも「安心」なんてしちゃいけないんです。

 

そして彼らは「それが武器(もしくは目眩まし)」になることを大変よく心得ていて、「自身もかつて感じてただろう心配や不安」を餌に、二次的な金儲けへと走り出すのです。

 

そんな彼らに僕が声を大にして言いたいのは、


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そもそも失敗を知らない人が成功を語っていいのでしょうか?

 

ということです。

 

冒頭で「10年」と書きましたが、今が2021年なので、10年前といえば2011年です。

つまり

「みーんなリーマンショック後」なのです。

正しくはサブプライム・ショックですが、ここ4~5年以内に「掴まされた人」以外は、

はっきり言って誰がやっても上手くいったのです。

もちろん、「運も実力のうち」だとは思います。でもだからと言って、「実力のうちでもある運」でもって「成功」を語るのはやはり間違っていると思います。語っていいのは「運」だけのはずです。少なくとも当面のあいだは。

近くにいる人に管を巻いているくらいならまだいいのでしょうが、それでもってさらに金儲けとなりますと、厚顔無恥と言いますか、


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大概にしてもらえませんか。

 

と言いたくなります。

そう言うひとに限って「再現性」という言葉を好んで使いますが、そもそも景気循環が一回りしていないのですから「再現」のしようがないのです。

大人にならないと「青春を振り返れない」のと同じで、振り返ることが出来ない以上、語ることも出来ないはずです。本来は。

 

中学生が青春を語るようなもんです。

かくいう僕は、かつて業務上で思いっきり失敗しました。

2000万ほど。

忘れもしません。2008年の5月です。
そして2008年の9月にリーマン・ショックがやってきます。
(実際のところは建築基準法の改正で、その前から不動産業界の潮目は変わりつつありました。ちょうど「姉歯」の頃です)

会社で買わせてもらった物件で、しかも当時の社長がすばやく損切りを勧めてくれたおかげで、その後もなんとか仕事を続けることができました。


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もしもあれが個人だったらと思うと、ぞっとするどころか「詰んで」いたでしょうね。確実に。だからこそ、余計に

「成功」を餌にするなと言いたくなります。

 

裏を返せば、

 

僕はあのときに失敗していたからこそ、いまだこの業界に留まり続けていられるのかもしれません。

僕はそれから数年かかりましたが、その2000万の損を、

1億の利益

で社長にお返ししました。

あの社長には本当に色々と勉強をさせてもらいました。

成功大家が雄弁に語っている「お勉強」ではなく、身の縮むような「勉強」です。

だからなのかどうか分かりませんが、(僕を含む)同業者が自分で物件を買うときは、とても慎重だったりします。

それらしい本やセミナーに参加して「いっちょ買ったるか」なんてゆめゆめ思いません。(そもそもセミナー会場に入れてもらえませんが)

それはやはり、買うことを目的にしていないからだと思います。

日頃、色んな物件情報に触れている人間とそうじゃない人では決定的な違いはあるのでしょうが、「本当にいい物件」なんてそうそうあるものではありません。ただ厄介なことに、

 

そこそこのモノだったらいつもあるのです

 

そこが判断を狂わせます。

街角でとても綺麗な人を見かけることはよくありますが、「思わず振り返ってしまうほど」のひとは、さすがに少ないのと同じで、

 

そこまででもない

 

ものを「さも凄いものに見せる」のが、成功大家やそれと組んでる業者だったりします。少しでも逡巡しようものなら「いざってときに決断が出来るかどうかで未来が変わる」なんてことまで平気でほざきます。
そんなときに

「成功」

の二文字が背中を押すのです。
業者でないぶん存在が近く、しかも成功しているのだから間違いがない、と。

 

皆さんはどうか惑わされないで下さい。
そんな不正確な言葉に。

 

そして「思わず振り返ってしまう」ものが現れたときに、さっと行動がとれる準備だけはどうか怠りないようにしておいて下さい。