新陳代謝。
大変気に入っていた温泉施設が競売にかけられていました。
メンテナンスを理由に長らく休業していたので何かあったんだろうなとは思っていたのですが、まさか競売物件としてお目にかかるとは思ってはいませんでした。
仕事柄、競売前の任意売却(債権者の同意を得て抵当権を抹消し、競売を回避すること)やすでに競売開始決定されたものなどに触れる機会は多いのですが、再開を心待ちにしていた温泉施設の競売情報はとりわけショックでした。
頭に過ったのは、同意が得られて競売が取り下げられないかということと、競落した会社(もしくは個人)が事業を引き継いでくれないだろうか、ということでした。
前者であれば、現経営者のもと再建の道を歩むのでまだいいのですが、後者ですと事業継続されるかも分かりませんし、何だか箱はそのままで中身が変わっていまった、ということも起きかねません。
その温泉施設は里山に囲まれた本当に何もないところで、近くに目ぼしい観光施設すらなく、何かのついでに立ち寄るという場所でもありません。
なので、「わざわざ」そこに行くというかたちになるのわけですが、私にはわざわざそこに行くだけの価値は多いにありました。それでも競売になるくらいですから、経営は相当厳しかったのかもしれません。
メンテナンス休業はコロナ禍前からでしたので、直接の原因ではないにせよ強烈な駄目を押したことに間違いないのでしょう。
コロナ禍においてそういった憂き目にあったお店や観光施設はたくさんあるかとは思いますが、都心に限って言えば普段なかなか空かない一等地の路面店などは(すぐに開業はしないまでも)早々に物件をおさえられてしまいました。
そうやって新陳代謝は繰り返されるのかもしれませんが、一方で老廃物として廃除されいくもの少なからずあるわけで、「自然淘汰」といってしまえばそれまでですが、なんとも言えないやるせなさが心に漂うのも確かです。
よく、長らく続いた店舗の閉店に駆けつけたひとたちに対し、「そんなに惜しむくらいなら普段からもっと」的なことを言うひとがいますが、頭のど真ん中ではないにせよ、片隅にその存在があったことに間違いないのでご容赦いただきいものです。
現に私も競売物件としてその温泉施設のことを思い出したくらいなので、例にはもれないのですが、幸い競売は取り下げられ、営業が再開されたと聞きつけたので早速「応援」に行ってこようと思っています。
でもよくよく考えてみれば自ら進んで「癒されに行く」わけで、応援というのは何だか大げさですし、おこがましいような気もします。
せっかくなのでサウナにも入って岩盤浴もして、身体の新陳代謝も促進してこようと思っています。